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ラストへの戦慄が『サイコ』(60)、『羊たちの沈黙』(91)、『セブン』(95)、『ゴーン・ガール』(14)を超えると言われる、サイコロジカル・サスペンスの傑作がついに日本で劇場初公開。
ある日突然消えた恋人を捜して、執念と亡霊に取り憑かれたかのように次第に精神を追い詰められていく男と、自分の異常性と正常性を立証したいという欲求から、ある「実験」に手を染める男。その対峙を通して、我々の前に筆舌に尽くしがたい絶望と恐怖があぶり出されていく。
監督は『マイセン幻影』(92)、『ダーク・ブラッド』(12)のフランス人監督、ジョルジュ・シュルイツァー。スタンリー・キューブリックは本作を3回観て「これまで観たすべての映画の中で最も恐ろしい映画だ」とシュルイツァーに伝えたという。93年には監督自身の手によりジェフ・ブリッジズ、キーファー・サザーランド、サンドラ・ブロック出演でハリウッド・リメイクされた。
過剰な演出を排除したことで、より重い余韻を醸し出す事に成功したこのオリジナル版は、満を持して人々の心に深い爪痕を残すであろう。
7月、オランダからフランスへと車で小旅行に出掛けていたレックスとサスキア。立ち寄ったドライブインで、サスキアは忽然と姿を消してしまう。必死に彼女を捜すも手掛かりは得られず、3年の歳月が経過。依然として捜索を続けるレックスの元へ、犯人らしき人物からの手紙が何通も届き始め…。
1932年、フランス生まれ。『João en het mes』(72)を第22回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品。『トゥワイス・ア・ウーマン』(79)、『Red Desert Penitentiary』(85)を手掛けたのちに『ザ・バニシング -消失-』(88)を世に送り出し、同年のオランダ映画祭にて最優秀作品賞・批評家賞を受賞、1991年にはナショナル・ボード・オブ・レビューにて最優秀外国語映画賞を受賞するなど国内外での高評価を受ける。本作のハリウッドリメイク『失踪 妄想は究極の凶器』(93)では引き続き監督をつとめ、ジェフ・ブリッジス、キーファー・サザーランド、サンドラ・ブロックらが出演した。その他の作品に『マイセン幻影』(92)、『クライムタイム』(96)などがあり、『ダーク・ブラッド』(02)は主演を務めたリヴァー・フェニックスの遺作となった。2014年に逝去。
1949年、フランス生まれ。大学で演劇と映画を学び、25歳よりTVドラマに多数出演。アニー・ジラルド、イザベル・ユペールほかと共演した『Docteur Françoise Gailland』(76)での映画デビューを皮切りに、『愛よもう一度』(76)、『追悼のメロディ』(76)、ジョルジュ・シュルイツァー監督の『トゥワイス・ア・ウーマン』(79)に出演。『愛と哀しみのボレロ』(81)や『パッション・ベアトリス』(87)などの出演を経て、『ザ・バニシング -消失-』(88)でシュルイツァー監督と二度目のタッグを果たす。二面性を持つ印象的な犯人役が評価をされ、第10回ポルト国際映画祭にて最優秀男優賞を受賞。後年は『汚れなき悪戯』(55)のリメイク『マルセリーノ・パーネ ヴィーノ』(91)や『幸せはシャンソニア劇場から』(08)に出演。2010年に逝去した。
1956年、ベルギー生まれ。国立劇場で演技を学び、いくつかのTVシリーズや『魅せられたる三夜』(87)などの映画に出演。『ザ・バニシング -消失-』(88)では消えた恋人を捜す男を熱演。その他『さまよえる人々』(95)、『ザ・ヒットマン』(03)、『S&M ある判事とその妻』(09)に出演。『Paradise Trips』(15)で同年のオーステンデ映画祭にて最優秀男優賞を受賞。
1961年、オランダ生まれ。1984年から演劇学校に通い、仲間の学生とともに劇団を立ち上げる。映画デビューとなった『ザ・バニシング -消失-』(88)では失踪する女性・サスキアを鮮烈に演じ、同年のヨーロピアン・フィルム・アワードにて最優秀助演女優賞を受賞。『ゴッホ』(90)、フィリップ・ガレル監督の『ギターはもう聞こえない』(91)、『愛の誕生』(93)に2作続けて出演。『不滅の恋/ベートーヴェン』(94)、『レンブラントへの贈り物』(99)、『サージェント・ペッパー ぼくの友だち』(04)ほか、フランス、オランダ、ドイツ作品などで国際色豊かに活躍中。『Tot ziens』(05)では第58回ロカルノ国際映画祭にて銀豹賞を受賞した。
こんな怖い映画があって良いのでしょうか?
犯人の思い描く「最大の悪」を駆使したレックスへの執拗な攻撃に、「もうやめてあげて…!」と思いながらも「結末を知りたい」という好奇心に抗えなかった。
結果、全身に鳥肌を立て震えました。
相沢梨紗
でんぱ組.inc
『情事』『バニー・レークは行方不明』とともに、筆者が認定する“世界三大失踪映画”の1本がこれだ。この伝説的なミステリー・スリラーは、ごく平凡な日常の中で人間が忽然と消える現象の不条理性と、そのあまりにも異様な真実をぞっとするほど冷徹に映し出す。映画史上まれに見る最悪の展開と、完璧なまでに美しい調和が同時に訪れるエンディングは、永遠に脳裏から離れない。
高橋諭治
映画ライター
まさかこんなにも恐ろしい映画が日本で劇場公開されるなんて!
映画が始まるやいなや耳に入り込んでくる物悲しくも闇の中へいざなう音楽…やがて息がつまる世界へと引きずり込まれてゆく。
そして終映後、いくつもの残像が目に焼き付いたまま席を立つ事が出来なかった。
愛する女性の名を叫ぶ男。その声がいつまでもいつまでも耳に響き続ける…「サスキアー!」「サスキアー!」
是非この機会にスクリーンで目撃して頂きたい映画だ。
竹中直人
俳優/映画監督
真相に迫ることこそ正義。探偵や刑事や記者はそれを信念に事件を追う。私もそれを信じて物語をつむいでいる。たとえ、むごたらしい地獄のような結末だったとしても、真相にさえたどりつければ、それなりの救いは得られる。なにも知らないよりは遥かにマシだ。
だが、本作はそんな捜す者の価値観を無慈悲に踏みにじる。真の地獄とはこういうことだといわんばかりに。覚悟を決めて見るべき暗黒の映画だ。
深町秋生
ミステリ作家
妻を捜す夫は私であり、犯人も私だ。つまり、あの犯罪は好奇心を持つ人ならば共感せざるを得ないのではないか。実際、私はDVDで観て以来、ずっと惹かれてしまっている。観客を共犯者にしてしまう映画が、独りではなく不特定多数が集まる劇場のスクリーンで上映されることは本来あるべきことであるが、作品の力がより深まることは間違いない。あの、共有されてはいけない(が、絶対に否定できない)感情が誰かの心にも突き刺さると思うと……恐い。
松江哲明
ドキュメンタリー監督
かの有名な絶望的エンディングの破壊力はもちろん、誰にも大なり小なり覚えがあるだろう「何げない選択が招いた取り返しのつかない喪失と悔恨」を描いているからこそ、この映画はここまで忘れ難いのだと思う。祝・日本初劇場公開!
ライムスター宇多丸
ラッパー/ラジオパーソナリティ